【豆知識】ホンダ初の四輪自動車は軽トラックの「T360」だった

2016.10.11
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シビックやインテグラ、CR-X、NSXなど、数々のスポーツマインドに溢れるクルマを生み出してきたホンダ。しかし、その歴史を辿ってみると、ホンダ初の4輪自動車はなんと軽トラックの「T360」なのです。

ホンダの創業者、本田宗一郎氏が作りたかったのは、スポーツカーだったはず。なぜ、ホンダ初の4輪車は、軽トラックになったのでしょうか?


バイクの成功だけでは満足しなかった本田宗一郎

バイクメーカーとして創業したホンダは、1958年にスーパーカブを発売して大ヒットを飛ばし、世界的なバイクメーカーとしてその名を轟かせていました。しかし、創業者である本田宗一郎氏はそれに満足せず、クルマへの夢を追い求めます。

02ホンダ・スーパーカブC100(1958年)


1955年、政府は、自動車の普及を促すため、「国民車育成要綱(通称:国民車構想)」を打ち出しました。この構想では、4人乗り、時速100km、価格15万円などの要件が定義され、自動車メーカー各社はそれらを満たす「国民車」の開発に着手。バイクメーカーだったホンダも、国民車の開発を行います。そして1959年1月に試作第1号の「XA170」が完成し、同年秋には第2号の「XA190」が作られました。

XA190は、レースでの活躍も見越していた宗一郎氏の意見もあって、2シーターのスポーツカーとして開発されました。しかし、ホンダを経営面で支えた専務、藤沢武夫氏は「商用車としての方に需要がある」と考えて軽トラックを提案します。そしてスポーツカーと軽トラックの開発が同時に行われ、2XA120、3XA120といった軽トラックの試作車が作られていきました。


ホンダのクルマ進出を急がせた「特振法案」

「自動車は十二分の検討をし、性能においても、設備の面においても、あらゆる点で絶対の自信と納得を得るまで商品化を急ぐべきではない」

宗一郎氏は、1959年12月発行のホンダ社報50号でこう述べるのですが、当時の通産省が1961年5月に示した「特定産業振興臨時措置法案(通称:特振法案)」が、その考えを一変させます。特振法案は乗用車、特殊鋼、石油化学の3業種を特定産業と指定し、乗用車に関しては1963年春をめどに既存のメーカーを量産車や特殊車、ミニカーなどにグループ分けをし、その後は新規参入ができなくなるという内容でした。

クルマの生産実績がないホンダには大問題の法案でした。参入ができなくなることを恐れて1962年1月にクルマの製作を急遽指示。同年6月5日に鈴鹿サーキットで予定していたホンダ総会でプロトタイプを発表することが決定します。


発売されたのはT360とS500のみ

無理難題を切り抜け、S360を総会で発表した後、同年10月末に開催された「第9回日本自動車ショー」には、S360と排気量を500ccに拡大したS500、そしてT360が出展され話題を呼びました。

am196310_s50001_01001H_Rホンダ・S500 (1963年)


翌年8月、いよいよホンダ初のクルマが発売されるのですが、しかしそれはT360のみでした。実は発売前、S360はS500に一本化し、特振法に合わせた乗用車とミニカーの両方の実績を作るという判断がされていたのです。そしてT360から遅れて2ヶ月後の10月、S500が発売されました。これが、軽トラックが最初に発売された理由なのです。

04ホンダ・T360(1963年)


T360は商用車にも関わらず、スポーツカーであるS360に載るはずだった水冷直列4気筒DOHCエンジンが搭載されました。パワーも当時の軽自動車は20psがせいぜいでしたが、T360はなんと30psを発揮。その高性能さからT360はのちにスポーツトラックとも呼ばれ、ユニークなクルマのひとつとしても現在に語り継がれることになります。

「ホンダ初の4輪車が軽トラック」と聞くと、意外に思われるかもしれませんが、本田宗一郎氏と藤沢武夫氏による「ホンダイズム」が詰まっていたクルマだったことがわかりますね。

その後も、ホンダは人々の生活に寄り添った軽自動車を作り続けました。T360にはのちに500ccのエンジンを搭載した普通車版の「T500」が追加されましたし、1967年には後継の「TN360」も登場します。そして現在は、「アクティ」がホンダの商用車を継いで人々とともに働いています。



問題(第3回 2級)

1963年、ホンダが4輪事業に初めて参入したときのクルマは、次のうちどれですか?

1:N360
2:1300
3:T360
4:アコード



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text by 阿部哲也+Bucket
写真提供:本田技研工業
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