【エポックカー図鑑】Vol.10 日産・シーマ ~社会現象にもなったバブル時代の高級セダン~

2018.10.18

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「シーマ現象」という言葉が流行語大賞の銅賞に選ばれたのは1988年のこと。もう30年も前の出来事ですから、覚えているのは40代以上の人でしょうね。「シーマ」とは日産の高級セダンのことであり、「シーマ現象」とはそんなシーマの初代モデルが爆発的に売れたことを表現する言葉です。

当時はバブル経済真っ盛りで、景気も人々のテンションも上がりっぱなし。今では信じられないことですが、高額な商品が次から次へと売れた時代でした。土地価格も高騰し、「東京23区の地価でアメリカ全土の土地を購入できる」という状況だったのだから驚きです。では、今回のテーマ、初代「日産・シーマ」とはどんなクルマだったのでしょうか?

3ナンバーボディに3.0Lエンジンを搭載

当時、オーナーカー(トヨタ・センチュリーや日産・プレジデントなど運転手付きで使われるクルマ以外)として国産最高峰となるのが、トヨタでは「クラウン」、日産では「セドリック」や「グロリア」でした。そんななか日産は、高額商品の売れ行きがいいので一般のオーナーカーとして“さらに上”の高級車を作ろうと考えます。それが、1988年に発売されたシーマでした。当初はセドリックやグロリアの派生モデルだったので、初代の正確な車名は「セドリック シーマ」と「グロリア シーマ」。いずれにせよこのクルマのデビューは、日本車が新しい時代へと踏み出した瞬間だったと言えます。

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プラットフォームは、セドリック/グロリア用をベースにしつつ、ボディをひとまわり大型化。当時は、クラウンやセドリック/グロリアといった国産最高峰のセダンと言えども、車体サイズは5ナンバーが基本でしたが、シーマは骨格自体がひとまわり大きな3ナンバーサイズで設計され、それが贅沢の象徴として人気を得たひとつの理由でした。

さらに、デザインも高く評価されました。それまでの高級セダンは格調とか格式、威厳といった形式ばった概念を重要視。言うなれば「クラシカル」だったのです。

ところがシーマは、それまでの高級セダンの概念を覆す伸びやかさを持ち、流麗でエレガントでした。これがバブル経済で贅沢を知った人々の心をつかんだのです。

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また、エンジンはすべて排気量3.0Lの V型6気筒。ベースとなったセドリック/グロリアには排気量2.0Lの4気筒エンジンも存在しましたが、シーマにはこれを用意しなかったことが「エンジンは大きいほど贅沢でいい」という当時の富裕層の風潮に見事にマッチ。自然吸気の他、255馬力(当時としては驚くほどの高出力だった)を発生するターボ付も用意され、まるで高性能スポーツカーのような暴力的な加速も話題になりました。

高級セダンの新しい形を教えてくれた

1987年秋の東京モーターショーに出品され、1988年1月から正式に販売がはじまったシーマは瞬く間に人気となり、当初の1年間に3万5000台強が販売されました。ベースグレードでも約500万円という高級車がこれだけ売れるのは、日本では初めてのこと。「高額品が次から次へと売れていく」という当時の状況になぞらえて「シーマ現象」と呼ばれるほど、ヒットモデルとなりました。バブル経済という空前の好景気がなければ、こんな社会現象は起きなかったでしょう。

果たしてシーマがクルマ社会に与えた影響は、どんなものだったのでしょうか? それは「セダンの解放」なのかもしれません。

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高級セダンはそれまで、格式高く端正でなければならない(と思われていた)存在でした。しかし、流麗なデザインのシーマはその縛りから解き放たれ、高級セダンの新しい姿を教えてくれたのです。そこに多くの人が賛同したと考えると、シーマ現象を理解しやすいですね。

高級車に自由を与えた車。ちょっとオーバーかもしれませんが、その世界観は格式張らずに遊び心を盛り込んだ高級セダンのメルセデス・ベンツ「CLS」やBMWの「4シリーズグランクーペ」「6シリーズグランクーペ」、そしてアウディ「A5スポーツバック」や「A7スポーツバック」の大先輩ともいえるでしょう。

text by 工藤貴宏 edit by 木谷宗義

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