【エポックカー図鑑】Vol.07 ユーノス・ロードスター ~消滅したジャンルを復活させ世界一愛されるオープンスポーツへ~

2018.08.17

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ユーノス・ロードスター(現在はマツダ・ロードスター)の登場は、世界に大きな衝撃を与えました。初代ロードスターがデビューした1980年代後半、FR(後輪駆動)の小さなオープンスポーツカーの販売は一部の少量生産車を除き消滅していて、ユーノス・ロードスターは久々の新型車だったからです。

小さなボディで車体が軽いスポーツカーのことを「ライトウェイトスポーツカー」と呼びますが、初代のロードスターがデビューした当時のライトウェイトスポーツカーはFF(前輪駆動)セダンの車体構造を流用した「手軽なクーペ」がほとんどでした。価格が安く、気軽に所有することができる一方、本格的なスポーツカーとして考えるとどこか物足りなかったのも事実だったのです。

消滅していたライトウェイトスポーツを復活

ロードスターの初代モデルが発売されたのは、1989年。実は、そこからさらに20年も遡れば、ライトウェイトスポーツカーはイギリスを中心にいくつかの車種が作られていました。1962年にロータス・エランとMGBが発売され、改良を加えられながら生産が続いていたのです。しかし、1970年代後半になると需要は激減。1975年にエランが、1980年にMG Bが生産を終了すると、オープンボディの小型スポーツカーは実質的に消滅したジャンルとなりました。

1989年の初代ロードスター発売が世界に与えた衝撃の理由は、消滅していたライトウェイトスポーツカーが復活したことにあります。

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セダンやハッチバックからの流用ではなく、スポーツカーのために専用設計された小型の軽量ボディで、ボディスタイルはもちろんオープン。かつてのイギリスのライトウェイトスポーツカー同様に、走りを積極的に楽しめる後輪駆動だったことも、クルマ好きを納得させました。また、170万円(日本での初代モデル価格)からという手軽な価格も、ヒットした理由のひとつです。

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需要低迷で消滅したジャンルに、新型車を登場させる。それはマツダにとっても大きな賭けでした。ヒットする保証はどこにもないからです。しかし、開発に携わったエンジニアをはじめ、マツダの多くの人はその小さなスポーツカーの可能性を実感。世の中を幸せにするクルマだと確認しました。

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そして実際にフタを開けてみれば、多くの人々に歓迎されて大ヒット。発売から12年目となる2000年5月には「2人乗り小型オープンスポーツカー生産累計世界一(53万1890台)」としてギネス世界記録認定を受け、その後は生産が10万台増えるごとにギネス記録を更新しています。4世代目デビュー後の2016年4月には累計生産台数が100万台を突破していました。

効率化が求められる中、多くのメカニズムを専用設計

初代ロードスターがデビューした当時はすでに、開発や生産の効率化のために自動車は他車種とメカニズムを共用するのが常識でした。ですから、専用の設計を多く施す必要のあるオープンボディで後輪駆動の小型スポーツカーは、効率を求められる量産自動車メーカーにとって、経営判断的にハードルが高い車種と言えます。

しかしロードスターは、コストダウンのために前輪駆動の乗用車のメカニズムを多く流用するようなことはせず、後輪駆動を貫きました。そのためにエンジンを除き、車体など多くのメカニズムを専用設計しています。

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エンジンも基本設計こそ当時のファミリア系から流用していますが、横置き搭載からロードスター用の縦置き搭載へと変更する必要があったので、実質的には新設計といっていいほど改められています。すなわち、初代ロードスターのメカニズムは、全面的にロードスターのための専用設計。とても手がかかっています。これは当時すでに、効率を重視する量産メーカーの手法としては極めて異例でした。

初代ロードスターの世界的な大ヒットはその後、ローバーMGF、フィアット・バルケッタ、BMZ・Z3、メルセデス・ベンツSLK、そしてポルシェ・ボクスターなど、欧州に多くのフォロワーを生み出しました。欧州車の影響を受けて登場した日本車が、今度は逆に欧州車へ刺激を与えた。そんな意味でも、歴史に刻まれるモデルといえます。

text by 工藤貴宏 edit by 木谷宗義 photo by マツダ

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