【カーライフ】さよなら、そしてまたいつか。10年乗ったポルシェに別れを告げたオーナーの想い

2017.05.03
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クルマと恋愛は似ている、なんて言われることがある。恋愛で特定の人とお付き合いする期間の長さと、愛車の所有期間の長さには因果関係があるというのだ。「クルマを頻繁に乗り換える人は恋愛でも…」というやつである。

その例にたとえると、僕の恋愛は長くというタイプに分類されるはず。つまり愛車には長く乗る方なのだ。最初に買ったクルマは6年、次のクルマも5年、そして6年、今手元にあるクルマは3年半。複数台所有(ってことは二股癖がある?)で重複期間があるけれど、自動車ライターとしては1台の所有期間はかなり長いと思う。

そして、なかでも一番長かったのが、先日手放したクルマだ。5年落ちの中古車で買い、気が付けば10年も生活を共にしていたのだから。


初めて手にした2シーターオープンカー

そのクルマはポルシェ・ボクスター。2002年式の中期モデルで、高性能仕様のエンジンを積んだ「ボクスターS」というグレード。2シーターでオープンカー。世間一般的に言えばとても“使えないクルマ”である。だけど、僕にとっては格別のオモチャだった。

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屋根を開ければ普通のクルマでは味わえない世界を見せてくれたし、たとえ屋根を開けられない雨の日でも特別な世界を提供してくれた。スポーツカーのお手本のような低い着座位置と包まれ感。脈を打つビート感で味のあるエンジン。ナチュラルだけどシャープ過ぎないハンドリング。峠道でもAピラーが邪魔にならない視界。そして後ろから聞こえてくるエンジン音。バサバサバサ…と、機械的で無機質で冷淡でなんだか味気ないけれど、いかにも精度の高さを感じさせる触感もまたドイツ車らしさ満点だった。

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初代ボクスターは、ポルシェが経営的にもっとも苦しい時期に設計されたこともあり、コストを抑えるためにインテリアは徹底して質素だった。インテリアの質感は、購入時点から新車価格にして5分の1程度であろう軽自動車にも負けるほどのレベル。レバー自体の剛性が低いのに取り付け剛性だけは高いウインカーレバーは、動かすたびに折れそうな歪み方だった。そういった部分では、かなり割り切られたクルマであることは間違いない。

しかし、屋根を開けて走り出せばそんなことはどうでもいいと思えた。走れば走るほど元気を与えてくれた。初めて手にした輸入車、そして2シーターオープンカーは僕にとってそんなクルマだった。


スポーツカーとは何たるかを学ばせてもらった

購入した10年前というタイミングは、僕がフリーランスのライターとして独立して少し経ったときで、仕事がやや軌道に乗ってきた時期だった。それなりに高い買い物だったけど、今にして思えば傍にボクスターがあったから頑張れた気がする。クルマ好きにとってクルマとは、そういう存在でなないだろうか?

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そして、ポルシェという(当時は)スポーツカー専業メーカーのクルマを所有することで、スポーツカーとは何たるかを学ばせてもらった。この経験はきっと、今後の自動車ライター生活に生きてくるはずだ。こうして僕はポルシェを降りることになったけれど、決してポルシェへの憧れが消えたわけではない。いつの日か必ず、再びポルシェオーナーになろうと心に誓っている。

ありがとう、そしてさようならポルシェ。またいつか。 

text & photo by 工藤貴宏+Bucket

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