【豆知識】昔の国産スポーツカーがみんな「280馬力」だったワケとは?

2016.08.16

Z32型フェアレディZ、R32型スカイラインGT-R、GTOツインターボ、JZA80型スープラ……。これらのクルマは、すべて1980年代後半に生まれたスポーツカーです。エンジンはみな6気筒のターボ。排気量は、GT-Rは2.6Lですが他のクルマはどれも3.0Lで、どのモデルも280馬力の最高出力を発生していました。では、なぜどれも同じ280馬力だったのでしょうか?

パワー競争に歯止めをかけた「自主規制」

1980年代はバブル期に向け、好景気が続いていた年代でした。クルマもより高性能でより豪華なものが求められ、排気量を拡大したりターボで過給したりと、ハイパワー化されていった時代です。しかし、だからといってすべてが「いい時代」だったわけではありません。2015年には4,117人にまで減った年間交通事故死者数は当時1万人を超えており、「第2次交通戦争」と言われて深刻な社会問題となっていました。 

そこで当時の運輸省が、「過度なハイパワー化は控えるように」と自動車メーカーに通達を出します。そして、「出力に上限を決めよう」と各社が自主規制を設けるようになったのです。

フェアレディZが「280馬力」の上限を決めた

では、なぜ250馬力でも300馬力でもなく「280馬力」になったのでしょうか? それは、自主規制が行われるようになった当時、もっとも出力の高い国産スポーツカーが280馬力だったからです。

日産・フェアレディZ(1989年)

その車種は日産・フェアレディZ。1989年にデビューした「Z32型」です。「ワイド&ロー」という言葉がピッタリなスタイリングは、高性能を感じさせ、スポーツカーファンの胸を熱くさせました。エンジンは3.0LのV6(VG30型)。NA(自然吸気)とツインターボの2種類が設定され、ツインターボ搭載車が当時の国産車で最強となる280馬力を発生したのです。このZ32型フェアレディZは、2000年まで10年以上にわたって生産されました。

280馬力を超えた初のモデルはホンダ・レジェンド 

280馬力を上限とした自主規制は、2004年まで約15年も続くこととなります。ここまで長く自主規制を続けた理由には、バブル崩壊のあおりを受け、それほど高性能車が求められなくなったことや、三菱・パジェロを火付け役とした「RVブーム」が起きたこともあるでしょう。

しかし、世界的に見れば280馬力はもはや「最強」ではなく、400馬力を超えるクルマも珍しくない時代に。上限を設けた理由であった交通事故死者数も減少に転じていたことから、自主規制撤廃の動きが起こり、2004年、ついに280馬力を超えるモデルが国内メーカーから発売されました。

ホンダ・レジェンド(2004年)


  車種はホンダ・レジェンド(KB型)。3.5Lの排気量を持つV6エンジンは、「国産車最強」を更新した300馬力で登場しました。このKB型レジェンドは、それまでの落ち着いたスタイルから一転してスポーティなデザインを採用し、前後輪だけでなく、左右輪の駆動力をコントロールする「SH-4WD」を搭載したことでも話題となったクルマです。

その後、レクサスやGT-Rを始め、300馬力を超えるクルマが続々と生まれているのはご存知のとおり。2017年モデルのGT-Rでは、なんと570馬力ものハイスペックを誇るようになりました。

日産GT-R(2017年モデル)

軽自動車は今も「64馬力」に自主規制

ここまで普通車の話をしてきましたが、軽自動車も普通車とほぼ同じ頃から自主規制を敷いています。軽自動車の自主規制は、1987年に登場したスズキ・アルト・ワークスの最高出力に合わせた64馬力です。

スズキ・アルト・ワークス(1987年)


軽自動車の自主規制は今も続いていて、最新モデルのタントやN BOXも最高出力は64馬力。軽自動車は日本独自の規格であるため、国際的な競争力はあまり求められませんが、30年近く経って技術は大きく進化しました。そろそろ見直すべきときに来ているかもしれません。

では、各メーカーが長く守ってきた280馬力の自主規制は、いったい何を残したのでしょうか? 自主規制が続いていれば、レクサスLF-Aや現在のGT-Rのようなスーパーカーは生まれてこなかったでしょう。でも、280馬力に上限を定めていたからこそ、日本の道路事情に適したモデルが作られていたと言える部分もあるのではないでしょうか。1990年代のクルマが今、「ヤングタイマー」と呼ばれて人気を博しているのには、そんな理由もありそうです。

2級 (第2回)

1989年には日本国内で多くの高性能車が発表されましたが、当時の国内メーカーによる自主規制値として適切な馬力は次のうちどれですか?

①230馬力
②250馬力
③280馬力
④300馬力


 

text by 木谷宗義/Bucket
画像協力:スズキ、本田技研工業、日産自動車
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