【エポックカー図鑑】Vol.06 ユーノス・コスモ ~世界初3ローターエンジンを搭載したマツダ史上最上級のクーペ~

2018.06.23

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日本の歴史において、日本人がもっとも裕福だったのは1980年代末から1990年代初頭の「バブル期」でしょう。クルマは市場環境に大きく左右されるもの。だからその裕福さは、日本車にも大きな影響を与えました。豪華なクルマが一気に増えたのです。「ユーノス・コスモ」もそんな1台。デビューは1990年4月ですから、開発はバブル経済の真っただ中に行われました。

マツダ史上最上級のクーペ

「ユーノスなんていう会社を知らない」という人もいるかもしれません。実は当時、マツダは販売台数を拡大しようと「マツダ」以外にも「アンフィニ」などいくつかのブランドを立ち上げていて、そのひとつが「ユーノス」でした。その「ユーノス」のコンパクトオープンスポーツカーが「ユーノス・ロードスター(現マツダ・ロードスター)」、マツダブランドから継承された大型のラグジュアリークーペが「ユーノス・コスモ」だったのです。

ライバルは、トヨタ・ソアラや日産・レパードなどの大型クーペ。2ドアクーペで全長4815mm、全幅1795mmと当時としてはかなり大きなボディサイズでした。

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ルーツを1967年に発売された「コスモスポーツ」とするか、それとも1975年に発売された「コスモAP」とするかは意見のわかれるところですが(マツダ公式ウェブサイトでは後者としている)、いずれにせよ間違いないのは「ユーノス・コスモ」はマツダ史上最上級のクーペだということ。それは発売から四半世紀が経過した今でも変わっていません。

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上級グレードのインテリアにふんだんに使った肌触りのいいレザー、そこに添えた本物の木目パネル。量産車への搭載としては世界初となるGPSカーナビも一部仕様に標準採用。日本車がやっと本当の贅沢を盛り込むことができた時代の、まさにその代表格と言えるクーペでした。

世界初の「3ローター」ロータリーエンジンを搭載

世界的に見てもユーノス・コスモは稀有なクルマでした。その理由はエンジンです。

ユーノス・コスモはロータリーエンジンだけを搭載するモデルで、上位仕様には「20B」と呼ぶ量産車としては世界初の“3ローターエンジン”が採用されたのです。3ローターとは、ロータリーエンジンの要である「ローター」が3個組み込まれたエンジンのこと。それまでマツダが採用していたロータリーエンジンはローターが2つの「2ローター」だったので、一般的なエンジンでいえば4気筒が6気筒になった感覚です。

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排気量も2ローターの1308ccから1962ccにアップし、パワーはなんと2ローター仕様の230psに対して280psまで引き上げました(馬力自主規制のため280psだったが潜在能力はさらに高かった)。世界で唯一のタイプのエンジンを積んだ、唯一無二のクルマでした。

世界でもユーノス・コスモでしか味わえないエンジンは魅力的で、ロータリーエンジン特有のスムーズな吹け上がりを楽しむだけでなく、決して軽くない車両重量ながらロケットのような鋭く豪快な加速も自慢。いっぽうで燃費の悪さが最大のウィークポイントと言われています。

残念なことに、燃費の悪さに加えて車両価格の高さ、そして高いとは言えないブランドイメージなどもあって販売的には成功したとは言えません。しかし熱狂的なファンが存在するので、現在でも程度のいい車体は高値で取引されています。

text by 工藤貴宏 edit by 木谷宗義  photo by マツダ

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